トイレは、家のなかでいちばん短時間で終わるリフォームです。早ければ半日、遅くても一日。それなのに、暮らしの満足度の上がり方が金額に対して不釣り合いなくらい大きい。うちのお客様アンケートで「やってよかった工事」を聞くと、いつも上位に来ます。掃除が楽になった、というのが理由の断トツ一位。二十年前の便器と今の便器は、掃除の手間がまるで違うんです。この記事では、その「掃除が楽になる理由」から、費用、機種、和式からの改修まで、ひととおり書いていきます。
費用と工期。半日で終わる工事です
便器の交換だけなら、工事費・処分費込みで9.8万円から25万円。作業時間は二時間から四時間です。床のクッションフロアと壁紙も一緒に張り替えると、プラス四万円から八万円で、工期は一日。和式から洋式に変える場合だけは別枠で、20万円から45万円、二日から四日かかります。
トイレ工事の特徴は、追加費用がほとんど出ないことです。給排水の位置がほぼ規格化されていて、開けてみたら想定外、ということが起きにくい。例外は、床が腐っているケースです。長年の小さな漏れで便器の周りの床がぶかぶかになっていることがあり、これは下地からの補修になります。
| 工事の内容 | 費用の目安 | 作業時間 |
|---|---|---|
| 組み合わせ便器へ交換 | 9.8万円〜16万円 | 2〜3時間 |
| 一体型・タンクレスへ交換 | 18万円〜35万円 | 3〜4時間 |
| 便器+床(クッションフロア) | 14万円〜22万円 | 半日 |
| 便器+床+壁紙 | 17万円〜28万円 | 1日 |
| 和式から洋式へ | 20万円〜45万円 | 2〜4日 |
| ウォシュレットのみ交換 | 4万円〜9万円 | 1時間 |
床と壁を一緒にやるかどうか、迷われる方が多いところです。判断の目安をひとつ。便器を外すと、これまで便器が乗っていた部分の床だけが、二十年間きれいなまま残ります。周りは黄ばんでいるのに、その部分だけ真っ白。この輪郭が気にならない方は便器だけで大丈夫です。ほとんどの方は気になります。
壁紙は、トイレという狭い空間だからこそ、少し冒険しても大丈夫な場所でもあります。正面の一面だけ色や柄を変える方が最近増えました。追加で数千円の話なので、遊ぶならここです。
タンクレスにするべきか、という問題
見た目の格好よさで言えば、タンクレスの圧勝です。タンクがない分すっきりして、掃除する面も減る。奥行きが十センチ以上短くなるので、狭いトイレでは体感の広さが変わります。
ただし、注意点が三つあります。ひとつは、水圧。タンクレスはタンクに水を貯めずに水道の圧力で流すので、必要な水圧が確保できない場所には設置できません。マンションの高層階や、古い戸建ての二階トイレでは、事前に水圧を測って判断します。測ってみて足りなければ、加圧ポンプ付きの機種を選ぶか、タンク式にするかです。
二つめは停電。タンクレスは電気で制御しているので、停電すると通常の操作ができません。手動レバーやバケツで流す方法は用意されていますが、覚えておく必要があります。三つめは手洗い。タンクの上で手を洗っていたご家庭では、別に手洗い器を付けるかどうかの判断が要ります。これが五万円から十五万円ほどかかるので、総額が思ったより膨らむ要因になります。
| タイプ | 価格帯 | 向いている場所 |
|---|---|---|
| 組み合わせ便器 | 9.8万円〜16万円 | コストを抑えたい。パーツごとに交換できるのが強み |
| 一体型 | 16万円〜28万円 | 見た目と価格のバランス。掃除する隙間が少ない |
| タンクレス | 18万円〜35万円 | 狭いトイレを広く見せたい。水圧が足りる場所 |
| 収納一体型(キャビネット付き) | 20万円〜35万円 | 掃除道具やストックを隠したい |
実は、玄人受けがいいのは組み合わせ便器です。理由は、便座が壊れたら便座だけ、タンクの部品が壊れたらその部品だけ交換できるから。一体型やタンクレスは、内部の一部が故障すると本体ごと交換になる場合があります。十五年使う機械として見ると、この差はばかになりません。見た目を取るか、修理のしやすさを取るか。ここは価値観の問題です。
掃除が楽になる、その中身
冒頭に書いた「掃除が楽になった」の正体を分解します。今のトイレが楽なのは、主に四つの進化のおかげです。
ひとつめ、フチなし形状。昔の便器は縁の裏側が折り返しになっていて、そこに汚れが溜まりました。ブラシが届かない場所です。今はこの折り返しがなく、ぐるっと一周拭けます。二つめ、便器表面の防汚加工。陶器の表面をガラス質でコーティングして、汚れが引っかかる凹凸をなくしている。三つめ、便座と便器の隙間をなくす設計、あるいは工具なしで便座を外せる機構。四つめ、自動洗浄と除菌水。使うたびに薄い除菌水を吹きかけて、汚れが定着する前に流してしまう仕組みです。
- フチなし … 一周ぐるっと拭ける。これだけでも交換する価値がある
- 防汚コーティング … 黒ずみと水垢の付着を遅らせる。数年で効果は落ちる
- 便座の脱着機構 … ワンタッチで外れると、隙間の掃除が三十秒で終わる
- 自動洗浄・除菌水 … 使用のたびに自動で流す。掃除の頻度が下がる
- 節水 … 二十年前は一回十三リットル、今は四リットル前後。水道代が年間一万円近く変わる家庭も
節水の話は、地味ですが効きます。四人家族で一日二十回流すとして、十三リットルと四リットルの差は一日百八十リットル。年間で六万五千リットル。水道代にすると一万数千円になります。十五年前のトイレをお使いなら、交換費用の一部は水道代で回収できる計算です。
ウォシュレットと機能。どこまで要るか
温水洗浄便座は、いまや標準装備といっていい存在ですが、機能の幅は広く、価格差も大きい。ざっくり分けると、洗浄と暖房だけの基本タイプが四万円前後、脱臭と自動開閉が付くと七万円前後、除菌や自動洗浄まで入ると十万円を超えます。
個人的な意見を書くと、優先順位はこうです。まず暖房便座。冬の朝、これがあるかないかで人生が変わります。次に脱臭。狭い個室では効果を実感しやすい。自動開閉は、便利ですがなくても困りません。むしろ「勝手に開く」ことに慣れないというご意見もいただきます。
節電機能については、最近の機種はどれも学習機能を持っていて、使わない時間帯は保温を切ります。年間の電気代は千円台から三千円台。ここを気にして機能を削る必要はあまりありません。
和式から洋式へ。段差と配管の話
和式トイレの改修は、うちが得意にしている工事のひとつです。大和市も藤沢市も、築四十年前後の住宅にはまだ和式が残っていて、ご高齢のご家族のために、というご相談を年に何十件もいただきます。
工事の中身は、単純な便器交換とはまったく別物です。和式便器は床に埋め込まれていて、まわりに段差が付いていることが多い。この段差をどうするかで、工法が二つに分かれます。段差を残したまま上に洋式を載せる方法(工期が短く安い)と、段差ごと解体して床をフラットにする方法(工期は長いが、その後の使い勝手とバリアフリー性がまるで違う)。
ご高齢の方が使われるなら、わたしは段差を解消する方をおすすめしています。段差は転倒の原因になりますし、車椅子や歩行器を将来使う可能性があるなら、なおさらです。費用は十万円ほど変わりますが、あとから作り直すことを考えれば安い。
- 工期は二日から四日。解体・配管のやり直し・下地・仕上げの工程が入る
- 排水管の位置がずれるため、床を開けて配管を引き直すことがほとんど
- 扉が内開きの場合、外開きか引き戸への変更を同時に検討すると安全性が上がる
- 手すりは下地の位置が決まる新設時に入れるのが確実
- 介護保険の住宅改修が使える場合がある。必ず工事前に申請すること
詰まり、水漏れ、そして呼ぶべきタイミング
トイレのトラブルで圧倒的に多いのが詰まりです。トイレットペーパーの流しすぎ、それからお子さんがおもちゃを落とした、という二大パターン。ペーパー由来のものはラバーカップ(すっぽん)で解決することが多く、まずご自分で試していただいて構いません。コツは、押すときではなく引くときに力を入れること。押すと余計に奥へ行きます。
固形物を落とした場合は、絶対に流さないでください。何度も流すと奥へ送り込んでしまい、便器を外さないと取れなくなります。便器の脱着が入ると、二万円から四万円の作業になります。落とした自覚があるうちに連絡いただければ、手前で取れる可能性が高い。
水がちょろちょろ流れ続ける、というのもよくあるご相談です。これはタンク内のゴムフロートの劣化がほとんどで、部品代千円ほどの世界。ただし放っておくと水道代が月に数千円増えます。「なんとなく音がする」段階で連絡いただくのが正解です。
トイレ空間そのものを、少しだけ良くする
便器を新しくすると、周りの古さが目立つ。これは本当によくある話で、交換の翌日に「やっぱり壁紙も」とお電話をいただくことが年に何度もあります。ですので、最初にお伝えしておきます。便器を替えるなら、床と壁紙も一緒にやったほうが、あとで安く済みます。
理由は単純で、便器を外している状態でしか、便器の下の床は張れないからです。後から床だけやろうとすると、もう一度便器を脱着する手間が発生して、その分の工賃が余計にかかります。同時なら、この脱着はどのみち発生しているので、追加は床材の実費と施工費だけです。
床材は、クッションフロアが定番です。水に強く、掃除がしやすく、値段も手頃。最近は木目調でも本物と見分けが付かないものが増えました。壁紙は、腰から下だけ汚れに強いものにする、という選び方もあります。
それから、意外と満足度が高いのが照明と手洗いです。トイレの照明を電球色に替えるだけで、ずいぶん落ち着いた空間になります。手すりを付けるお宅も増えました。トイレは一日に何度も入る場所ですから、ここが気持ちいいかどうかは、暮らしの機嫌に地味に効きます。
- 床と壁紙は便器交換と同時に。後からだと脱着費が余計にかかる
- 床材はクッションフロア。水に強く掃除が楽で価格も手頃
- 壁紙は腰から下だけ汚れに強いものにする手もある
- 照明を電球色にすると空間の印象が変わる
- 手すりは下地の位置で付けられる場所が決まる。壁を触るうちに相談を
臭いの話。原因はたいてい三つのどれかです
掃除しているのに臭う、というご相談は、実はかなり多いです。芳香剤を足す前に、原因を切り分けてみてください。だいたい三つのどれかに当たります。
ひとつめは、便器と床の隙間。長年使った便器は、設置面のパッキンやコーキングが劣化して、そこから尿が染み込んでいることがあります。これは掃除では取れません。便器を外して床ごと替えるしかない。逆に言えば、交換すれば一発で消えます。
ふたつめは、壁紙と床の吸い込み。特に男性のお子さんがいらっしゃるお宅は、跳ねた飛沫が壁の下部に染みています。防臭・防汚タイプの壁紙に替えると、かなり違います。
みっつめが、封水切れ。長期間使っていないトイレは、便器内にたまっている水が蒸発して、下水の臭いが上がってきます。これは水を流せば直ります。旅行から帰ってきて臭う、という場合はまずこれを疑ってください。
うちで「トイレの臭いが取れない」というご相談を受けると、まず便器の根元を見せていただきます。そこが黒ずんでいたら、ほぼ確定です。
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この記事の監修者
屋比久 盛友株式会社マルセイテック 代表取締役
保有資格:外壁診断士/宅地建物取引士/ドローンパイロット2級/建築CAD2級
記事の数値・制度は一次情報で確認したものだけを載せ、費用の目安は当店の施工事例の金額をもとにしています。監修者のプロフィールと監修の方針
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