洗面所は、家のなかでいちばん働いている部屋だと思っています。朝は顔を洗って歯を磨いて髪を整えて、昼は洗濯をして、夜は入浴前の脱衣室になる。それだけの役割を、たった一坪ほどの空間が引き受けている。だから傷むのも早いし、使いにくいと毎日じわじわ効いてくる。ところが予算の話になると、いちばん後回しにされる場所でもあります。もったいない。ここは十万円台から手が入って、しかも効果を毎日実感できる場所なんです。
費用の目安。十万円台から始まります
洗面台の交換だけなら、工事費と処分費込みで9.8万円から30万円。作業は半日から一日で終わります。床のクッションフロアと壁紙も張り替えると、プラス四万円から八万円。洗濯機の防水パンの入れ替えや、換気扇の交換を足すと、総額で二十万円から四十万円あたりが多い着地点です。
洗面台の本体価格は、間口(横幅)と鏡のタイプでほぼ決まります。日本の洗面台は幅七十五センチが最も多く、次いで九十センチ。この十五センチの差が、使い勝手を大きく変えます。
| 工事の内容 | 費用の目安 | 工期 |
|---|---|---|
| 洗面台交換(間口75cm・一面鏡) | 9.8万円〜16万円 | 半日 |
| 洗面台交換(間口75cm・三面鏡) | 14万円〜22万円 | 半日 |
| 洗面台交換(間口90cm・上位グレード) | 20万円〜35万円 | 半日〜1日 |
| 洗面台+床+壁紙 | 18万円〜40万円 | 1〜2日 |
| 洗面所まるごと(換気扇・防水パン含む) | 30万円〜55万円 | 2〜3日 |
| 水栓のみ交換 | 2.5万円〜5万円 | 1〜2時間 |
間口と鏡。ここだけは実物を見て決めてほしい
七十五センチと九十センチ、十五センチしか違いません。図面で見ればわずかな差です。ところが実際に使うと、この十五センチにドライヤーもコップも化粧品も収まる。九十センチにできる寸法があるなら、わたしは九十をおすすめします。差額は三万円前後です。
鏡は、一面鏡・二面鏡・三面鏡の三択。三面鏡は裏側が全部収納になるので、洗面所の散らかりが劇的に減ります。ご家族が多いお宅ほど効きます。ただし、鏡が大きい分だけ重く、上部に照明が入るので、その分の価格が乗ります。
もうひとつ、意外に効くのが照明の色です。昔の洗面台は電球色(オレンジっぽい光)が主流でしたが、いまは昼白色に近い、肌の色が正しく見える照明が選べます。お化粧をされる方には、この違いは大きいはずです。ショールームで鏡を覗いてみてください。
- 間口 … 60/75/90/100センチ。既存の75を90にできるかは壁の位置で決まる
- 三面鏡 … 裏収納の容量が段違い。ご家族が多いお宅に
- 収納タイプ … 引き出し式か開き戸か。引き出しは奥のものが取れる
- ボウルの深さ … 深いと水はねが減るが、腰をかがめる量が増える
- 水栓 … シャワーホースが引き出せるタイプはボウル掃除が本当に楽
- 照明 … 肌の色が正しく見える色温度かどうか。実物で確認を
引き出し式か開き戸か、という選択で迷われたら、いま使っている洗面台の下を開けてみてください。奥のほうに何年も取り出していないものがありませんか。開き戸の宿命です。引き出し式にすると、その死角がなくなります。
洗濯機まわりと換気。地味だけど大事な話
洗面台と同時に手を入れておくと後悔しないのが、洗濯機の防水パンと換気扇です。
防水パンは、洗濯機の下に敷いてある樹脂のトレー。万一の漏水を受け止めるためのものですが、二十年も経つと縁が割れていたり、下に埃が詰まっていたりします。洗濯機をどけるのは工事のときくらいしかチャンスがないので、このタイミングで見ておくのが賢い。防水パンの交換は二万円から四万円ほどです。
換気扇は、洗面所の寿命そのものに関わります。ここの換気が弱いと、湿気が壁紙の裏に回ってカビが出る。浴室の湿気も洗面所に流れ込みますから、住宅のなかでも湿度が高くなりやすい場所です。回っているように見えても、羽根に埃が積もって風量が半分以下になっていることがよくあります。ティッシュを一枚吸盤のように吸い付けるかどうかで、簡単に判定できます。落ちるようなら交換時期です。
それから、コンセントの数。洗面所のコンセントが一口しかなくて、ドライヤーと電動歯ブラシと加湿器を差し替えながら使っている、というお宅は多いです。壁を触るタイミングで増設しておくと、一万円台から二万円台で、その後何年もの小さなストレスが消えます。
床と壁。ここを替えると別の部屋になります
洗面所の床は、水はねと洗剤で必ず傷みます。とくに洗面台の前と、洗濯機の脚の跡。クッションフロアなら張り替えは三万円から六万円、半日で終わります。
洗面台だけ替えて床を残すと、キッチンやトイレと同じことが起きます。洗面台が乗っていた部分だけ、二十年前の色のまま残る。そして新しい真っ白な洗面台の足元に、黄ばんだ床が見える。ここは同時にやったほうが、気持ちの上でも費用の上でも得です。
壁紙は、防カビ・調湿の機能があるものを選べます。とくに脱衣室として使う場合、浴室のドアから湿気が入ってくるので、この選択は効きます。追加で数千円の話です。
最近増えたのが、床材に耐水性のフロアタイルを使うご要望。クッションフロアより硬く、見た目が本物の木や石に近い。費用は一・五倍ほどになりますが、洗濯機を引きずったときの傷に強いという実利があります。
よくあるトラブルと、交換すべきタイミング
洗面所のご相談で多いのは、排水口のつまり、水栓の水漏れ、そして「ボウルにひびが入った」の三つです。
つまりは、髪の毛と歯磨き粉と石鹸カスが混ざった塊が原因。排水口の下にあるS字のトラップを外して掃除すれば、たいてい直ります。ご自分でやる場合は、必ずバケツを下に置いてから外してください。中に水が溜まっています。
水栓の水漏れは、ハンドルの根元からならパッキン、レバーの下からならカートリッジ。修理費は一万円前後ですが、十年以上使っているなら本体交換のほうが結果的に安く付きます。
ボウルのひびは、修理ができません。陶器も樹脂も、割れたら交換です。しかも洗面台は本体とボウルが一体になっているものが多いので、ボウルだけの交換ができず、まるごと交換になる。「ひびは小さいから」と放っておくと、そこから水が下のキャビネットに落ちて、床まで腐らせます。ひびを見つけたら早めにご相談ください。
- 十五年から二十年 … 洗面台の一般的な寿命。水栓は十年前後
- ボウルのひび … 修理不可。本体交換のサイン
- キャビネットの底が黒い・ふくれている … 内部で漏れている可能性大
- 扉の丁番がゆるい・閉まらない … 部品供給が終わっていることが多い
- 排水のたびに床下から音がする … 配管側の問題。要点検
後悔しない進め方と、大和・藤沢の洗面所事情
洗面所リフォームで聞く後悔は、ほぼ二つに集約されます。ひとつは「小さいのを選んでしまった」。もうひとつは「床と壁をやらなかった」。どちらも、数万円の差で回避できたものです。
逆に「やりすぎた」という声はあまり聞きません。この部屋は毎日使う頻度が高いので、投じたぶんの実感が返ってきやすい。だから予算配分としては、洗面所は削らない方向をおすすめしています。
地域の話をすると、大和市・藤沢市の築三十年前後の戸建ては、洗面所が畳一枚から一枚半という間取りが多い。ここに洗濯機と洗面台が入っているので、寸法の余裕がほとんどありません。九十センチの洗面台に替えたいと思っても、扉の開き方や洗濯機の位置で入らないことがある。だから現地で実測してから機種を決めます。図面と現物が数センチ違う、というのは古い住宅では珍しくありません。
マンションの場合は、洗面台の背面に配管が集中していることが多く、既存とまったく同じ配置なら問題ないのですが、大きさを変えると配管の逃げ場がない、ということが起こります。これも現地確認で分かります。
水栓の種類で、毎日の面倒くささが変わります
洗面台を選ぶとき、本体のデザインばかり見て、水栓は「付いてくるもの」と思っている方が多い。でも、毎日いちばん触るのは水栓です。ここの選び方で、朝の一分が変わります。
いまの主流は、シャワーヘッドが引き出せるタイプ。ボウルの掃除がしやすく、髪を洗うときにも使えます。うちで交換した後にいちばん喜ばれるのが、実はこれ。「洗面台でこんなに楽に髪が洗えると思わなかった」と言われます。
レバーの形も選べます。上げ吐水(レバーを上げると水が出る)が標準ですが、手が汚れているときに肘で操作できる大きめのレバーもある。介護の場面ではこれが効きます。
自動水栓(センサー式)も洗面台向けの機種が出ています。手をかざすだけで出るので衛生的ですが、電源が必要で、価格も上がる。小さなお子さんがいらっしゃるお宅では、出しっぱなしがなくなるという実利があります。
それから、ひとつだけ現実的な注意を。シャワーホースが引き出せるタイプは、そのホースがいずれ寿命を迎えます。だいたい十年前後。ホースだけの交換もできますが、機種によっては本体ごとになります。長く使うつもりなら、部品の供給がしっかりしているメーカーを選ぶのが賢い。
- 引き出し式シャワー水栓 … ボウル掃除と洗髪が格段に楽。いちばんの推し
- 大きめレバー … 肘で操作できる。介護の場面で効く
- センサー式 … 衛生的だが電源が必要で価格も上がる
- ホースは10年前後で寿命。部品供給の良いメーカーを選ぶ
- 整水・浄水機能は洗面台には基本不要。キッチンで検討を
朝の渋滞と、家族が増えたときの洗面所
洗面所は、家のなかで唯一「朝、家族が並ぶ場所」です。ここが狭いと、毎朝ちいさな諍いが起きる。この話は設備のカタログには一行も書いてありませんが、実際のご相談ではいちばんよく出てきます。
対策として現実的なのは三つ。ひとつは、鏡の前を二人が同時に使える幅にすること。九十センチあれば、大人が一人と子どもが一人は並べます。ひとつは、コンセントを増やすこと。ドライヤーとヘアアイロンと電動歯ブラシが同時に取り合いになるお宅は本当に多い。
そしてもうひとつが、洗面台以外の場所に「もう一つの鏡」を作ること。廊下側の壁に細い鏡と小さな棚を付けるだけで、髪を整える人が洗面台から離れてくれます。数万円で済んで、効果は劇的です。
お子さんが小さいうちは踏み台が要ります。引き出しの下に踏み台がすっぽり入るタイプの洗面台があって、これは片付けの手間が減るので人気です。数年すれば要らなくなるものですから、造り付けにしないほうがいい。
逆に、ご両親と同居されるようになった場合は、椅子に座って使えるかどうかが問題になります。足元が空いているタイプ(カウンター下がオープン)にしておくと、車椅子でも使えます。収納量は減りますが、それを補うだけの価値がある場面があります。
- 鏡前の幅は90cmで二人並べる。朝の渋滞が消える
- コンセントは最低2口、できれば3口。取り合いが起きる
- 廊下側に細い鏡と棚を足すと、洗面台が空く
- 踏み台が収納できるタイプは、数年後に困らない
- 足元がオープンなタイプは、座っても車椅子でも使える
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この記事の監修者
屋比久 盛友株式会社マルセイテック 代表取締役
保有資格:外壁診断士/宅地建物取引士/ドローンパイロット2級/建築CAD2級
記事の数値・制度は一次情報で確認したものだけを載せ、費用の目安は当店の施工事例の金額をもとにしています。監修者のプロフィールと監修の方針
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