キッチンの打ち合わせで、いちばん盛り上がるのは寸法の話です。意外でしょうか。色や扉のデザインは写真を見れば伝わるのですが、「作業スペースがあと十五センチ欲しい」という話は、実際に立ってみないと分からない。だから私たちは、現地調査のときにお客様に今のキッチンの前に立っていただいて、どこで何をしているかを見せてもらいます。まな板を置く位置、ゴミ箱の定位置、しゃがんで鍋を出す動作。そこにヒントが全部あります。このページでは、そうやって現場で拾ってきた判断材料を、順番に並べていきます。
費用。何にいくらかかっているのか
同じ場所に同じ型のキッチンを入れ替えるなら、工事費込みで49.8万円から120万円。レイアウトを変えて対面にする、壁を抜く、といった工事が入ると、100万円から250万円というレンジになります。工期は入れ替えのみで二日から三日、レイアウト変更を伴うと五日から十日です。
本体価格の幅が大きいのがキッチンの特徴です。同じメーカーの同じサイズでも、扉のグレードと天板の素材で四十万円くらい平気で動きます。逆に、工事費のほうは間口が同じなら大きくは変わりません。ですから予算調整は、ほぼ本体のグレードで行うことになります。
| 工事の内容 | 費用の目安 | 工期 |
|---|---|---|
| 同じ位置に入れ替え(I型2550) | 49.8万円〜90万円 | 2〜3日 |
| 同じ位置に入れ替え(L型・上位グレード) | 90万円〜150万円 | 3〜4日 |
| 壁付けから対面へ変更 | 120万円〜250万円 | 5〜10日 |
| キッチンと床・壁紙を同時に | 70万円〜160万円 | 3〜5日 |
| レンジフードのみ交換 | 6万円〜15万円 | 半日 |
見落とされがちな費用が三つあります。ひとつめは電気工事。食洗機やIHを新設すると専用回路が要り、分電盤に空きがなければブレーカーの増設が入ります。二つめはガス配管の移動。三つめは、既存のキッチンを外したあとに現れる壁と床の補修です。二十年ものを外すと、後ろの壁だけ日焼けしていないので、ここだけ白い長方形が残る。ここをどうするかで、壁紙を張り替えるかどうかの判断が発生します。
だからうちは、キッチン交換のお見積りには最初から壁紙と床のご提案を添えることが多いです。押し売りではなく、あとから「やっぱり気になる」となる確率が高いからです。同時にやれば養生も一度で済み、別々にやるより二割ほど安く上がります。
レイアウトと寸法。ここは感覚でなく数字で決める
キッチンの型は大きく分けて、壁付けのI型、L型、対面のペニンシュラ、島のように独立したアイランドの四つ。憧れで選ばれることが多いのは対面ですが、対面にすると必ず何かを失います。多くの場合、収納と、ダイニングの広さです。
対面キッチンは、背面に食器棚を置く前提で作られます。つまり通路分の幅が必要になる。この通路が八十センチを切ると、後ろを人が通れません。九十センチあれば二人ですれ違えます。この数字を確保できるかどうかが、対面にできるかどうかの分かれ目です。図面の上で足りていても、冷蔵庫の扉を開けたら塞がる、というのはよくある話なので、現地でメジャーを当てて確認します。
- 作業スペース … シンクとコンロの間は六十センチ以上欲しい。まな板が置ける最小限
- 通路幅 … 一人なら八十センチ、二人で立つなら九十センチから百二十センチ
- 天板の高さ … 身長÷2+5センチが目安。八十五センチが標準だが九十センチも選べる
- 吊戸棚 … 上から二段目までしか実際には使わない。無理に付けない選択もあり
- 間口 … 2550ミリが最多。2100だとコンロ横の置き場所がかなり狭くなる
天板の高さは、実は満足度への影響が大きい割に、あまり意識されません。日本の標準は八十五センチですが、これは身長百六十センチの方に合わせた寸法です。背の高い方が八十五センチで毎日料理をすると、腰にきます。ショールームでは必ず、いつも履いているスリッパに近い状態で立ってみてください。
収納については、引き出し式かどうかだけ見ておけば大丈夫です。二十年前のキッチンは開き戸で、奥のものが取れない構造でした。今のスライド収納は奥まで引き出せる。この差は、想像よりずっと日々の楽さに効きます。
メーカーと素材。天板とシンクで印象が決まる
キッチンもメーカーごとに得意分野があります。クリナップはステンレスのキャビネット。中まで金属なので水と湿気に強く、においが付きにくい。リクシルは価格帯の幅と、収納の作り込み。TOTOは水まわりメーカーらしくシンクとお掃除のしやすさ。タカラスタンダードはホーローの扉で、マグネットが付いて傷にも強い。パナソニックは天板の質感と、家電との組み合わせやすさが強みです。
天板の素材は、ステンレス・人造大理石・セラミックの三択とお考えください。ステンレスは熱に強くて丈夫、でも細かい傷は必ず付きます。人造大理石は色が選べて質感がよく、いま一番人気ですが、熱い鍋を直置きすると跡が残ります。セラミックは硬さも耐熱も最強クラスで、その代わり高い。差額で十五万円から三十万円ほど見ておいてください。
| 天板の素材 | 強いところ | 弱いところ | 価格 |
|---|---|---|---|
| ステンレス | 熱・水・汚れに強い。衛生的 | 細かい擦り傷が目立つ | 標準 |
| 人造大理石 | 色と質感の自由度。継ぎ目が目立たない | 熱い鍋の直置きに弱い。着色汚れ | +0〜8万円 |
| セラミック | 耐熱・耐傷が別格。まな板なしで切れる硬さ | 価格。落とすと欠けることがある | +15〜30万円 |
| メラミン(造作) | コストが抑えられる | 水に弱い。継ぎ目から傷む | − |
シンクは、ステンレスか人造大理石か。ここは掃除の好みで決まります。ステンレスは水垢が白く残りやすく、人造大理石は色移りが起きやすい。どちらも掃除すれば落ちるので、どちらが自分の性格に合うかという話です。それより効くのは、シンクの底の形状。最近は排水口へ自然に水が流れる傾斜が付いていて、これがあるとぬめりの発生がかなり遅くなります。
コンロ、レンジフード、食洗機。機器の選び分け
IHにするかガスのままかは、キッチンの相談で一番よく聞かれる二択かもしれません。結論から言うと、料理の仕方で決めてください。中華鍋を振る方、直火で炙る方はガスです。IHは鍋を持ち上げると加熱が止まります。一方で、掃除の楽さ、夏の暑さ、小さいお子さんやご高齢の方の安全性ではIHが優位です。
工事の面では、ガスからIHへの変更には二百ボルトの専用回路が必要で、分電盤からキッチンまで配線を引く工事が発生します。三万円から八万円ほど。逆にIHからガスへ戻す場合はガス管の新設が必要で、こちらのほうが手間がかかります。
- レンジフード … いまはフィルターなしの整流板タイプが主流。掃除が月一回で済むようになる
- 食洗機 … 国産の浅型は入りやすいが容量が小さい。深型は四人分がまとめて入る
- 海外製食洗機 … 容量と洗浄力は圧倒的。ただし設置に幅六十センチと専用の給排水が要る
- 水栓 … タッチレスは手が汚れているときに本当に楽。ただし電源が必要
- 浄水器一体型水栓 … カートリッジの交換費用を十年分計算してから決める
食洗機については、正直に申し上げると「入れて後悔した」という声をほとんど聞きません。逆に「もっと早く入れればよかった」は毎月聞きます。予算を削る場面で真っ先に候補に挙がる装備なのですが、わたしは残すことをおすすめしています。追加で十二万円から二十五万円ほどかかりますが、毎日十五分の手間が消えるのは、十年で九百時間になります。
レンジフードは、既存のダクトの位置と大きさで選べる機種が決まります。特にマンションは開口の寸法が決まっているため、現地で確認するまでは断定できません。ここは必ず実測してからのご提案になります。
工事の当日と、その前にやっておくこと
キッチン交換の工事は、二日から三日。一日目に既存キッチンの解体と撤去、給排水とガスの仮止め。二日目に新しいキッチンの組み立てと設置、接続、試運転。壁紙や床も張り替える場合は、もう一日いただきます。
この間、台所は使えません。水道も止まります。ですので着工前に、必ずやっていただきたい準備があります。
- 吊戸棚と引き出しの中身を全部出しておく(これがいちばん大変です)
- 冷蔵庫の中を減らしておく。移動が必要な場合があります
- 工事期間中の食事の段取りを決めておく。二日は外食かお惣菜と割り切るのが楽
- 電気ポットとカセットコンロを一台用意しておくと安心
- 壁紙を替えるなら、隣接する部屋との境目をどこにするか決めておく
中身を出す作業は、思っている三倍の量が出てきます。打ち合わせのときに「二十年分ですからね」と申し上げるのですが、皆さん当日に驚かれます。ただ、これは同時に片付けの絶好の機会でもあって、「賞味期限が五年前のものが出てきました」と笑って報告してくださる方が多いです。
追加費用が発生しやすいのは、解体後に見える給排水管の劣化と、床の傷みです。特にシンクの下は、長年の小さな水漏れで床材が黒くなっていることがあります。見つけたらその場で写真を撮って、金額をお伝えしてから直します。
予算とお金の考え方、そして大和・藤沢の事情
キッチンは、水まわりのなかで最も金額が動かせる場所です。だからこそ、上限を先に決めておくことをおすすめします。上限を決めずにショールームへ行くと、ほぼ確実に予算を超えます。あの空間は、超えるように出来ていますから。
支払いはリフォームローンを使われる方も多く、当店では提携ローンのご案内もしています。それから、条件が合えば省エネ関連の補助金や、自治体の助成が使える年もあります。制度は年度で変わるので、ご相談時に最新の情報をお調べしてお伝えします。
地域の話をすると、大和市も藤沢市も、築二十五年から四十年の戸建てが多い地域です。この年代の家は、壁付けのI型キッチンで、間口2550、吊戸棚あり、というのが判で押したように共通しています。だからこそ交換工事の勘所が溜まっていて、現地に伺えばだいたい何が入るか見当がつきます。マンションは藤沢の駅周辺と大和の南林間あたりに大型物件が集まっていて、こちらは管理規約と搬入経路の確認が最初の仕事になります。
収納の話を、最後にひとつだけ
キッチンのご相談で、いちばん最後まで決まらないのが収納です。そして、住み始めてからいちばん「こうすればよかった」と言われるのも収納。カタログの写真はどれも美しく整っていて、実際の暮らしとはかけ離れていますから、無理もありません。
まず現実的な話を。開き戸の下台と、引き出しの下台では、入る量も出し入れのしやすさもまるで違います。開き戸は奥のものが死にます。奥にしまった土鍋を、年に一度も使わないまま十年、というお宅を何軒も見てきました。全段引き出しにすると価格は上がりますが、ここは上げる価値のある数少ない項目だと思っています。
吊戸棚は、下がるタイプ(昇降式)にするか、いっそ付けないか。ご高齢の方は上に手が届かないので、吊戸棚があっても使わなくなります。付けないと決めて、その分の予算を下の引き出しに回すのは、実は賢い判断です。開放感も出ます。
それから、シンク下。以前は扉を開けると排水管がむき出しでしたが、いまはほとんどの機種が引き出しになっていて、排水管を避けた形で収納できます。ここが使えるようになるだけで、体感の収納量がかなり変わります。
そして、最後に必ず申し上げるのが「片付けてから採寸してください」。いまのキッチンに入っているものを一度全部出して、本当に使うものだけを並べてみると、必要な収納量が見えます。だいたい、思っているより少なくて済みます。
- 下台は全段引き出しが基本。開き戸は奥が死ぬ
- 吊戸棚は昇降式にするか、付けずに予算を下へ回す
- シンク下の引き出しは、体感の収納量を大きく変える
- 調味料は手元、鍋は足元、使わないものは別の部屋
- 採寸の前に、いまの中身を一度全部出してみる
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この記事の監修者
屋比久 盛友株式会社マルセイテック 代表取締役
保有資格:外壁診断士/宅地建物取引士/ドローンパイロット2級/建築CAD2級
記事の数値・制度は一次情報で確認したものだけを載せ、費用の目安は当店の施工事例の金額をもとにしています。監修者のプロフィールと監修の方針
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