お風呂の打ち合わせは、たいてい長くなります。給湯器なら三十分で決まる話が、浴室だと二時間かかる。理由ははっきりしていて、選ぶ項目が多いからです。浴槽の形、床の色、壁のパネル、ドアの種類、水栓、シャワーフック、鏡を付けるか付けないか、手すりの位置、乾燥機を入れるか。それから、これがいちばん大きいのですが、お風呂は「毎日入る場所」なので、皆さん本気になるんですね。キッチンの色を決めるより真剣な顔をされる方が多い。この記事では、その長い打ち合わせで実際に話している内容を、順番どおりに書いていきます。
費用と工期。まずここが分からないと動けない
ユニットバスからユニットバスへの入れ替えで、64.8万円から120万円ほど。工期は四日から五日。これが標準です。在来工法(タイル貼りの昔ながらの浴室)からユニットバスに変える場合は、解体とコンクリートの土間打ちが入るので、90万円から180万円、工期は六日から八日とお考えください。
この差はどこから来るかというと、ほとんどが解体と下地の分です。タイルの浴室は、壁も床もはつって(壊して)撤去し、土間を作り直し、給排水を引き直す必要がある。しかも壊してみるまで中の傷み具合が分かりません。木造で土台が腐っていた現場では、補修に十万円ほど追加でいただいたこともあります。
| 工事の種類 | 費用の目安 | 工期 | お風呂に入れない日数 |
|---|---|---|---|
| ユニットバス → ユニットバス(戸建て) | 64.8万円〜120万円 | 4〜5日 | 4〜5日 |
| ユニットバス → ユニットバス(マンション) | 70万円〜130万円 | 4〜6日 | 4〜6日 |
| 在来工法 → ユニットバス | 90万円〜180万円 | 6〜8日 | 6〜8日 |
| 浴室と洗面所をまとめて | 110万円〜220万円 | 7〜10日 | 6〜8日 |
| 浴室・洗面・トイレ・キッチンの4点 | 180万円〜350万円 | 10〜14日 | 5〜7日 |
お客様がいちばん気にされるのは、金額よりも「何日お風呂に入れないか」です。これは正直にお伝えしています。四日から五日、近所の銭湯かご実家、あるいはスポーツクラブのシャワーで乗り切っていただくことになります。大和市も藤沢市も日帰り温泉施設が点在しているので、工事前に地図をお渡しすることがあります。ちょっとした旅行気分になったと言ってくださる方もいて、こちらとしては救われた気持ちになります。
マンションのほうが少し高く、少し長いのは、搬入経路と管理規約の制約があるからです。エレベーターに入らないサイズの部材を階段で上げると、その分の手間がかかる。それから作業時間が九時から十七時に制限されている物件も多く、一日の進みが遅くなります。
メーカーはどこがいいのか、という質問への答え
打ち合わせで必ず聞かれます。「結局どこのメーカーがいいんですか」。正直に答えると、主要メーカーはどこも十分よくできていて、致命的にダメなものはありません。ただし、得意な方向がはっきり違います。
TOTOは床です。「ほっカラリ床」という、踏むとわずかに柔らかくて、乾きが早い床。冬の一歩目の冷たさが本当に違うので、ショールームでは必ず裸足で踏んでみてくださいとお伝えしています。リクシルは浴槽の保温性能と、価格帯の幅の広さ。予算に合わせて刻めるのが強い。パナソニックは有機ガラス系の浴槽で、質感と汚れの落ちやすさが群を抜いています。タカラスタンダードはホーローの壁で、マグネットが付く。掃除道具を壁に貼れるのが地味に便利で、これが決め手になる方も一定数います。
| メーカー | 強いところ | 価格の傾向 | こんな方に |
|---|---|---|---|
| TOTO | 床の暖かさと乾きやすさ、掃除のしやすさ | 中〜高 | 冬の冷たさが苦手な方 |
| リクシル | 浴槽の保温、グレードの選択肢 | 低〜高 | 予算を細かく調整したい方 |
| パナソニック | 浴槽の質感、汚れの落ちやすさ | 中〜高 | 見た目と手入れを両立したい方 |
| タカラスタンダード | ホーロー壁の頑丈さ、マグネット収納 | 中 | 掃除の手間を減らしたい方 |
| ハウステック | コストパフォーマンス | 低〜中 | 賃貸・投資物件のオーナー様 |
グレードについてもひとこと。同じメーカーでも下位グレードと上位グレードで倍近い差がつきますが、違いの多くは「浴槽の材質」「床の仕様」「換気乾燥機の有無」「水栓のデザイン」に集中しています。躯体の強さや防水性能そのものは、下位グレードでもきちんとしています。ですので予算を絞るときは、グレードを下げるより、オプションを削るほうが満足度が落ちにくい。これは何十件も見てきた実感です。
浴槽・床・設備。実際に毎日さわる部分
カタログで選ぶと失敗しやすいのがこの章の内容です。写真では分からないので、できればショールームで実物を見ていただきたい。とはいえ全員が行けるわけではないので、判断の勘所を書いておきます。
浴槽の形は、ストレート・ワイド・アーチ(半身浴用の段付き)の三系統。段付きは腰かけられて便利ですが、その分だけお湯の量が減り、身体を伸ばせません。背が高い方には向きません。逆に段があると、小さいお子さんを座らせて洗えるので、育児期のご家庭には評判がいい。ライフステージで正解が変わる、珍しい部分です。
- 浴槽の素材 … FRPが標準。人造大理石は肌ざわりと保温性で一段上、差額は五万円前後
- 床 … 乾きやすい樹脂床が主流。目地の少ないものほど掃除が楽
- ドア … 折れ戸が標準。開き戸は掃除しやすいが洗い場を圧迫する。引き戸は幅が要る
- 換気乾燥暖房機 … 追加で八万円〜十五万円。花粉の季節と梅雨に本領を発揮する
- 水栓 … サーモスタット式が標準。手元でシャワーを止められるタイプは水道代に効く
- 手すり … 後付けもできるが、下地の関係で新設時に入れるほうが確実で安い
換気乾燥暖房機を入れるか迷われる方が多いのですが、わたしは「洗濯物を室内で干す習慣があるかどうか」でお決めくださいとお伝えしています。乾燥機能を使うご家庭では毎日活躍しますし、使わないご家庭では十年で数えるほどしか押されないボタンになります。暖房目的だけなら、脱衣所に小さなヒーターを置くほうが安上がりです。
それから、鏡。最近は「鏡をなくしてください」というご要望が増えました。水垢の掃除から解放されるからです。慣れると不便はないそうで、うちの職人も自宅の浴室から鏡を外しました。
カビ・汚れ・水はけ。十年後に効いてくる選び方
浴室のご相談で「リフォームしたい理由」を伺うと、上位に必ず来るのがカビです。掃除しても取れない、目地の黒ずみが落ちない、という話。
ユニットバスにすると、この悩みはかなり減ります。理由は単純で、タイルの目地がないからです。カビは目地とシリコンコーキングに根を張るので、面が続いていて水が溜まらない構造なら、そもそも生えにくい。在来工法からユニットバスに替えたお客様が、半年後に「掃除が三分の一になった」とおっしゃったことがあって、あれはうれしい報告でした。
とはいえユニットバスでも、換気の使い方を間違えると生えます。入浴後は換気扇を二時間から三時間まわす。ドアの下部にある通気口をふさがない。これだけで全然違います。二十四時間換気が付いている物件なら、切らずに回しっぱなしにしてください。電気代は月に数十円です。
寒さ、介護、そして補助金
冬の浴室が寒い、というご相談は、実は命に関わる話でもあります。暖かい部屋から寒い脱衣所へ移動して、熱いお湯に入る。この温度差で血圧が急変するのがヒートショックで、冬場の入浴中の事故は交通事故より多いという統計もあります。ご高齢のご家族がいるお宅では、断熱浴槽と床の断熱、それから脱衣所の暖房を、セットで考えていただきたいところです。
介護に関わる工事では、介護保険の住宅改修費が使える場合があります。要支援・要介護の認定を受けている方が対象で、手すりの設置、段差の解消、床材の変更などが該当します。支給限度は原則二十万円で、その九割から七割が戻る仕組み。ただし工事前の申請が絶対条件で、先に工事をしてしまうと一円も出ません。ここだけは順番を間違えないでください。
国や自治体の省エネ関連の補助制度で、高断熱浴槽が対象になる年もあります。制度は毎年変わるので、ご相談の時点でその年の中身を確認してお伝えします。
- 断熱浴槽 … 四時間で二度しか下がらない仕様。追い焚きの回数が減り、ガス代に効く
- 床の断熱 … 一歩目のヒヤッとがなくなる。冬に効果を実感しやすい
- 手すり … 浴槽の出入り用と、洗い場の立ち上がり用で位置が違う
- またぎ高さ … 四十センチ以下が目安。低いほど出入りが楽になる
- 介護保険の住宅改修 … 必ず工事前にケアマネージャーへ相談
失敗しない進め方。順番を間違えないために
浴室リフォームで後悔した、という話を聞くとき、原因はだいたい工事そのものではなく、決め方の順番にあります。おすすめの順番はこうです。
まず現地調査を受けて、入るサイズを確定させる。ここが出発点です。浴室のサイズは1216、1616、1620といった規格で表され、既存の空間に何が入るかは実測しないと分かりません。「カタログのこれがいい」と決めてから測ったら入らなかった、というのがいちばん切ないパターンです。
サイズが決まったら、次にメーカーとグレードを二つか三つに絞り、そこからショールームへ行く。順番が逆だと、ショールームで見た夢のような浴室が予算の倍だった、という悲しい展開になります。営業として本音を言うと、予算を先に共有していただけると、こちらもご案内しやすいです。金額を言うと足元を見られると思われがちですが、実際は逆で、幅が分からないほうが提案が散らかります。
- 現地調査で入るサイズを確定させる(ここが最初)
- 予算の上限を先に決めて、業者に伝える
- 候補を二〜三に絞ってからショールームへ行く
- 見積書は「一式」でなく費目ごとに出してもらう
- 工事中にお風呂をどうするか、着工前に決めておく
- 保証の内容と年数を、口約束でなく書面で確認する
見積書の話を少し。「浴室リフォーム工事一式 98万円」という書き方の見積りを持ってこられる方がいます。これは比較できません。本体・解体・配管・電気・処分・養生・諸経費が、それぞれいくらなのか。分けて書いてもらってください。分けられない理由は基本的にないはずです。うちは頼まれなくても分けて出します。そのほうが説明が早いからです。
築年数と建物の傷み。開けてみて分かること
最後に、避けて通れない話をします。築三十年を超える戸建ての在来浴室を解体すると、一定の確率で下地が傷んでいます。タイルの目地から入った水が、長い年月をかけて土台や柱の足元を傷めているんですね。
これは事前の目視ではまず分かりません。壁を壊して初めて見えます。ですので、うちでは古い在来浴室のお見積りをお出しするときに、「補修が必要になった場合の概算」を最初から書き添えるようにしています。五万円で済むこともあれば、二十万円かかることもある。着工後に初めて聞かされるより、覚悟してから始めていただくほうがいい。
逆に言えば、開けてみたら何ともなかった、というケースも多いです。特にユニットバスがすでに入っている物件は、水が構造体に回りにくいので、傷んでいることはめったにありません。築年数だけで不安になる必要はありません。
この記事に関連するページ
この記事の監修者
屋比久 盛友株式会社マルセイテック 代表取締役
保有資格:外壁診断士/宅地建物取引士/ドローンパイロット2級/建築CAD2級
記事の数値・制度は一次情報で確認したものだけを載せ、費用の目安は当店の施工事例の金額をもとにしています。監修者のプロフィールと監修の方針
大和・藤沢の水まわりリフォーム



